2010年3月31日水曜日

セビージャのペーニャ・デ・グアルディア

恒例、ペーニャ・デ・グアルディアが今年も4月5日からセビージャで開催される。

2005年秋からはじまったこの催し、
セビージャで、ビエナル開催期間中に限らずいつでも
いいフラメンコを観れるようにと
今年も春は6月まで、そしてまた秋10月、11月と開催予定。

春は、市内7つのフラメンコのペーニャを会場に
夜22時から若手アーティストたちによるショーが行われる。
入場料は6ユーロと気軽に立ち寄れるお値段。

出演アーティスト、日時、場所など詳細はこちらに掲載されている。

4月5日の開幕を飾るのは
踊りにパコ・イダルゴ、歌にトリニ・デ・ラ・イスラ、モイ・デ・モロン、
ギターにヘスース・ゲレーロという面々で
場所はトリアーナはカスティージャ通り47番の“カンテス・アル・アイレ”。
6月3日の閉幕まで21公演、
ほかに踊りはラ・トロンバ(エル・トロンボの妹)、アベル・アラナ、
アナ・ペレス、マルタ・バルプラダ、マヌエル・ベジード、
マリア・タボラ、ルイス・デ・ウトレーラの6人が出演予定だ。


写真はマリア・タボラ

カルロス・サウラの「フラメンコ・オイ」バルセロナ公演

昨年の夏、マドリードで初演されたカルロス・サウラ監督の「フラメンコ・オイ」
4月15日から5月2日までバルセロナ・テアトラ・ムシカル(BTM)で再演されます。
ボブ・ディランやスティングもコンサートを行ったこの劇場、
昔のスポーツセンターでバルセロナ五輪の新体操会場。
2000年に改装されて大規模なショーが行われる劇場となりました。

チャノ・ドミンゲス音楽監督、ラファエル・エステべスとナニ・パーニョが振り付けを担当。
歌にヘスース・メンデスとダビ・パロマール、
舞踊にはパストーラ・ガルバンとラウラ・ロサレンら
若手のホープが出演しています。

入場券は20~40ユーロでこちらで発売中。

2010年3月30日火曜日

コルドバにフォスフォリート・センター

コルドバの観光の中心、メスキータ・カテドラルから東へ。
エキゾチックな美女たちの絵で知られるフリオ・ロメロ・トーレスの美術館(お勧め!)のある
ポトロ広場は、セルバンテスが「ドン・キホーテ」にもその名を記しているという歴史のある広場。
この広場の美術館の向かい、ポサーダ・デ・ポトロも15世紀につくられたという古い家。
ここにはコルドバ(県プエンテ・へニル)がうんだ歌い手、フォスフォリートを記念する
フラメンコ・センターとなり。3月25日にオープンしました!
フォスフォリートの録音や私物などがおさめられるほか展覧会場ともなり、
オープニング記念には2004年、2007年のコルドバのコンクールの写真展が行われるとか。

ちなみに3年に1度行われるコルドバのコンクールの今年は開催年ですが
これまでの5月ではなく、秋に開催予定とのことです!

2010年3月28日日曜日

日本のフラメンコ最前線4 AMI & 萩原淳子

前回、書いたAMIのエル・フラメンコ公演。
AMIのあまりの素晴らしさについ書き過ぎて
共演の萩原淳子にふれなかった。

その萩原だが、
1年くらい前に、セビージャで観たときよりも確実に成長している。
スペインでも数多くの舞台に立ってきた自信もあるだろう。
舞台度胸がついてきたし、
現地にいる強みをよくいかし、
スペインの、今のフラメンコの感覚をよくつかんでいる。

赤いバタ・デ・コーラでのアレグリアスは
表情は少し固かったようにも思うが、
舞踊自体には余裕すら感じられた。

タラントの方は、振り付けがまだ開発途中?なのかな。
いろいろやりたい気持ちが先走り、
まだ構成も整理できていないのではないように思えたのが少し残念。
歌ぶりで客席に背中を向けてレトラ半分以上というのもよくわからない。

これはなにも彼女だけの問題だけでなく
スペインの若手などでもよくあることなのだが、
次の振り、次の振りへと頭がいくあまり、気がせいて
ひとつひとつの振りがきちんと終わらず、
最後がおざなりになってしまう感がある。

観ている方からいえば
いくら難しいテクニックをつかってもそれほどわからない。
わかったとしても、感心はしても感動するところまではいかない。
最初から最後まで全速力で走り続けるのではなく
緩急自在、ここぞというところでみせる工夫もあっていい。

回転の処理、目線、表情、首の位置…
細かいところまで、もう少し考えれば
もっとずっと良くなるはずだ。

なんて、厳しいことをいうようだが、
上をみてもう一歩、もう一段と、階段上って行かねば。
って、これは誰にでもいえること。
志を高く、前進あるのみ!

2010年3月26日金曜日

日本のフラメンコ最前線3 AMI 再び (長いよ)

いや~よかったです。
もう、ほんと、これはみんなに見てもらいたい。
私的にはスペイン人、それもアルティスタたちにみてもらいたい。

私をそんな気持ちにさせたのはAMI。
エバはなんというだろう、ベレンは? 
彼女たちなら踊りそのものをみてくれるはずだ。
仲間がここにいる。そう思うはずだ。

やっぱフラメンコは国境をこえるよ。
AMIが踊ったのはフラメンコ。
シンプルな“フラメンコ”
日本人のフラメンコ、ではなく、スペイン人とだって、
じゅうぶん、がちんこ勝負できる、
第一線に通用する本物のフラメンコ。
あ、もちろんフラメンコは勝ち負けじゃないし、
勝負するもんじゃないけどね。
同じ土俵にAMIはいるんだ。
んとね、いいたいことは、日本人の、という枠をとっぱらってみても
普通に、そして本当に素晴らしい踊りだったということ。


私はもともとスペイン人でも、日本人でも、同じ視点でみている。
本人は少なくともそのつもり。
スペイン人だってみんながみんなエバ・ジェルバブエナやサラ・バラスではないし
エバやサラだって日によっていいとき、わるいときもあるし
(彼女たちは調子が悪くても一定のレベルを保っている。それだけで感謝だが)
舞踊だけでなく、作品としてみた場合、不満を感じさせられることもある。
スペインのフラメンコ舞踊のレベル、とくにテクニック面の最低基準は、
この20年でぐーんと上がったように思う。
いや、若手の中には正しい姿勢も満足にとれないうちにばりばりやってる人もいるから
正確にいえば、そうではないのかもしれないけれど、
たとえばサパテアードの複雑さ、とかはそうじゃないかな。
だからテクニックそしてコンパスがちゃんとしているというのは実は出発点にすぎない。
そこからどのように自分の思いを伝えるか。
フラメンコの枠からはずれることなく自分をだしていくか。
これがとっても難しい。
これができると同じような位置にいる踊り手たちの中からひとつ頭をだすということだ。
生まれながらの天才も努力で磨かれ開花する。

昨日、25日「エル・フラメンコ」でのAMI
どこをとっても文句のつけどころがない。
テクニック、構成、思いの込め方、伝え方。
ほぼパーフェクトだ。
神は細部に宿る、というが、彼女の踊りも細部がことに素晴らしい。

回転したバタ・デ・コーラの先がコンパスの止めできれいに止まる。
指の動きひとつ、首の向きひとつとっても美しく、フラメンカだ。
まなざしひとつで語る、語る。値千金の目力。
表情にいたるまで気を抜かない。
ひとつひとつの動きを最後まできっちりやって次の動きへとつなげる。
(これって振り付けに追われてたりする人や、
先へ先へと行ってしまう人にはできないけっこうむずかしいことなのだ)
ひとつひとつの動きにセンティード/方向性・意味がある。
腕を伸ばせばその先へと心も動く。その心の動きに観客の心も寄り添う。

そして構成の素晴らしさ。
振り付けは難しい。
サリーダ、歌振り、サパテアード、ジャマーダの組み合わせ=振り付け、
なんていうような単純なものではない。
今まで習ってきたパソの組み合わせだけでもできないことはないだろうけど
あれもこれもと欲張ってただ忙しいだけじゃ、観ているこっちにゃ伝わらない。
いくら難しい足をやっても、関心もたれたり、感心されたりはしても感動はこない。
それで何を伝えたいか。その“何”は言葉にならなくてもいい。
でもその“何”をもっているかどうか。
それを伝えるための工夫。そのどちらもが必要。
ディナミスモ、ってスペインではいうんだけど、
強弱、ニュアンスの変化、など、起承転結じゃないけれど、
いいたいこと、やりたいことがきちんと整理されてこそ伝わる
っていうことがあるんだよね。
踊りだけじゃなくて、ギターやカンテでもいっしょ。
ぜんぶ超絶ファルセータでも、絶唱しまくりでもオレ!の声はかからない。
歌の最後のかすれるようになるところや、
ここぞというところで怒濤のようにたたみかける強さに人は熱狂する。
そういうもんじゃありませんか?

そんな細かくもうるさい観客(私のことだ)の注文にもこたえてあまりあるバイレ。

先週、扱いにくそうなバタだなあ、と
そこにばかりとらわれてしまったティエントも
今回はそんなこと考えたことすら忘れさせるほどに見事な出来。
同じ衣装にもかかわらず、で、あります。
あ、そうなんだ。とすごく納得。そんなバタつかいでありました。
ゆるやかな始まり。リズムをたぐいよせるように踊ると
テンポアップしたタンゴへ昇華していく。
ほんとぞくぞくした。
そして先週に引き続きソレアの素晴らしさ。
ドラマチックで、これはこうとしか踊れない、
今の彼女のソレアなんだ。
はやってるから、というような“狙って”つくったものじゃない。
今の彼女を伝えるためには、この振り付けじゃなくてはいけなかったんだ、
と素直に思える、そんなソレア。
マイムのようにもみえる、モダンと観る人もいるかもしれないはじまりから最後まで
息をもつかせぬ緊張感のある、ドラマチックなソレア。
言葉にならない思いがこめられたソレア。


ミラグロス・メンヒバルやアンドレス・マリンをはじめ
彼女が師事した多くの先生たちや、
彼女が観てきた沢山のアルティスタたちから吸収してきたものは
あちこちにみえる。
でもそれは単なる真似なんかではむろんなく、
そこから栄養をえて今や
彼女独自のスタイルとして確立されている。

いやあ、ほんとうにまったく、文句のつけようのない舞台でした。

ほんとうに感謝。んでもってなんだか人に自慢したくなるような気分。
でもここまでくるためにはほんと、絶え間ない努力があったに違いない。
テクニックあってこそ心は伝わるんだ。
心を伝えるためのテクニックを自分のものとして自由に使えるよう身につけるまで
めっちゃくちゃ大変だったと思う。
才能は生まれながらのものかもしれない。
でもそれをいかすことができるのはこれまでの、
長い年月の努力ゆえ、アフィシオンゆえ。

いやあ、ほんとうにありがとう。
またぜひ観にいきます。
で、スペインでもぜひまた一度。
お願いします!

2010年3月25日木曜日



サラ・バラスがマドリードなら
ホアキン・コルテスはバルセロナで。
4月14日から25日までの2週間、
最新作「カレ」をコリセウム劇場で公演する。
亡くなった、母に捧げたこの作品は
昨年3月に初演されたものだが
メキシコシティでは9千人もの観客を集めたという。
前売り券はこちらから。



前売りといえば、ビエナルの、パコ・デ・ルシア公演は初日で売り切れたそうです。
ファルキートもいい席は全部売り切れ。
エストレージャも1階はほぼ売り切れ。
そのほかチョニ、イサベル・バジョン、ラファエラ・カラスコらの公演も
残りわずか。

2010年3月23日火曜日

サラ・バラス マドリード公演

スペインで最も人気のあるバイラオーラ、サラ・バラスが
今日、3月23日から4月11日までマドリードのカルデロン劇場で
昨年末、パリで初演した新作「エセンシアス」を公演。

この後、17、18日はパルマ・デ・マジョルカで
21日から25日までカディス、ファリャ劇場での公演を最後に一時休業するという。
それは母になりたい、という思いゆえ。
お医者さんからのアドバイスで12年間の舞踊団のキャリアにいったんピリオドを打つ。

これまでの作品の中の名場面集とでもいうべき「エセンシアス」
「センセーション」のファルーカや
「狂王女フアナ」のソレア、
パコ・デ・ルシアの音楽による「カルメン」のタンゴ…
これらの曲を25日生まれ故郷の、38歳になるサラはどんな思いで踊るのだろうか。

2年後にはまた舞台復帰の予定という。
母となった彼女の舞台を楽しみに、拍手で彼女を見送ろう。

2010年3月22日月曜日

ビエナルの前売り開始

今日からこの秋、セビージャで行われる
世界最大のフラメンコ・フェスティバル、ビエナル
入場券前売りが開始!

もう前売りが始まります。
早い。

人気の公演は売り切れも予想されます。
ビエナルを観に行く予定の方はお早めに切符のご手配を。

ちなみに志風の予想では
初日のミゲル・ポベーダ、
最終日のパコ・デ・ルシアをはじめ
エストレージャ・モレンテ、
ファルキート
らは早くに売り切れとなるのではないかと思います。

前売りはこちらから
クレジットカードが必要です。

その昔はまず予約して
後、現金決済。
セビージャにいる人に頼まないと買えなかったのですが
今や世界中のどこからでも買える。
フラメンコも時代の流れとは無縁ではありません。

2010年3月20日土曜日

日本のフラメンコ最前線2 瀧本正信+鈴木尚

八王子のライブハウス、Bar X.Y.Z. →A
主にロック系のミュージシャンが登場するこの店に初登場の瀧本正信。
事前告知がじゅうぶんでなかったせいか観客は少なかったものの
真っ向からカンテに取り組み歌った。
タランタ、ファンダンゴ、アレグリアス…
まっすぐ心に飛び込んでくる。

昔ながらの伝統的な歌詞を歌っても
カマロンの歌詞を歌っても
誰のまねでもない、彼ならではの歌になるのがすごい。
ちょっとなつかしい感じのする、
やさしい手触りの、
彼自身のフラメンコに対する愛があふれた
そんなカンテ。
確実につたわってくるものがある。


歌詞がわからない、とカンテを敬遠している人にもぜひきいてもらいたい。
カンテは歌詞の内容よりも
インテンシオン(意図)。
その歌詞をどう歌うかという方向性
その歌で何を伝えたいか
その歌にこめた心
が大切
だから歌詞がわからなくても涙が流れてくることがあるわけだ。

フラメンコも音楽だから
音程やリズムももちろん重要。
音程はあってる方がいいし、リズム/コンパスを外すのは論外。
でもそのインテンシオンがなければ、
伝えたい何か、歌に託した何か、歌への心がなければ
観てるこっちには伝わってこない。

なーんてことを考えながら
贅沢なライブを楽しんだ。
サイドから歌をサポートする、
ギターの鈴木尚との呼吸もぴったり。

舞踊のないフラメンコ公演は日本では少ないけれど
これからは増えてくるかな。
いってほしいな。
フラメンコの魅力は、力は決して舞踊だけじゃなくて
音楽の力もあることを
こんなライブハウスで誰か一人にでも知ってもらうことができたら
こんなにうれしいことはない。

って、きっと彼も思ってるんでしょうね。

ちなみに来月29日もまたここでライブあるそうです。


極上焼酎が揃ってて料理もおいしいよ。




2010年3月19日金曜日

日本のフラメンコ最前線1 AMI&TOMOKO ISHII

3月の水曜日のエル・フラメンコはAMIのライブ。毎回ゲストを迎えての4回公演。
3月17日はその3回目で、石井智子との公演。

マントンをつかってのオープニングからフィナーレまで
とにかくよく考えられているのに脱帽。
途切れることなく演目が続いていく。

マントンを持った頭の真上に高く上げ顔をかくした形ではじまるオープニング。
二人のその姿の美しさ。
ただ立っているだけでわかる実力。
ともにミラグロス・メンヒバルに師事。
女性らしい優雅なバイレに定評があるが、こうしてみるとそれぞれに個性的。
ブラソの美しさ、姿のよさ、
回転、体づかいなどの基本がしっかりできていること、
など共通点はあるものの 決して似てはいない。
同じ師についてもそれぞれの資質で違った花が咲く。

かつてはミラグロスに師事したものの最近は習っていないはずの
AMIの手首の使いかたやブラソ、からだのつかいかたなどに
ミラグロスの影がみえるのが面白い。

オープニングのロンデーニャからしぜんな流れでつながる石井のタラントは昨秋の公演で踊った曲? 印象はまったくちがったので地震はない。
小さな会場だけにドラマチックな表情などが印象に残る。
そう、舞踊には表情も重要だ。

AMIはティエント。一時ほとんど踊られることがなかった曲だが、なぜか最近、スペインでもリバイバル。最近もラファエル・カンパージョが踊っているのをみたばかりだ。
ゆっくりしたリズムをいかにみせるか。
ともすれば単調にもなりがちなところをいかにもたせてもりあげて観客をひきこむか。
そしてまた、そのあとのタンゴにいかにつなげるか。
グラシアと色気を、こびることなくいやらしくならずにどうみせるか。
ふたつの曲種のコントラストをどう配するか。
みどころ満載なこの曲をAMIはバタ・デ・コーラで踊る。思いがけない展開。
そのバタが、布地のせいだろうか、今ひとつ、
そのテクニックにバタがこたえてくれないのが残念。衣装で損をしている感がある。
そこが気になっていまひとつのめりこめない。
曲もティエントのレトラひとつのあとタンゴのリズムになるのだが、
またティエントのレトラになったり、でもリズムはタンゴ、という複雑さ。

石井のアレグリアスも純白のバタで。見事!の一言。
空間の制限があるので舞台のように思いっきり踊れなかったようだが
彼女にはやはり花がある。
優雅で華やか。観ているこちらも晴れ晴れするようなアレグリアスだ。

そしてAMIのソレア。
ドラマチックな、マイムのような出だしはAMIのもう一人の師で、以前共演していたアンドレス・マリンを思い出させた。が、それは今のアンドレスで、AMIと踊っていた頃のアンドレスではない。さらにいえば、彼がやりたい表現の方向性のようなものが似ているということであり、アンドレスが今やっていることそのままではもちろんない。うーん、なぜだろう。でも面白い。踊りにすごみのようなものがでてきている。
ミラーダ(視線)ひとつでうならせる。
複雑な構成の曲だが、ちゃんとしたイメージが彼女の中にあって踊っているという感じがある。ゆるぎないなにかをきちんともっている。そして引き出しの多い人だ。オレ!と叫ぶ間すら与えずにたたみかけるように訴えてくる。その表現がひとつではない。表現しようとしているものはひとつでもそれをさまざまなかたちでみせようとする。そんな感じだ。

フィナーレでは舞踊団員による身体を叩き、互いの手を叩きあってのリズム遊びなど、
楽しい趣向も。
最後の挨拶にいたるまで観客を楽しませる、ということも忘れない。
この姿勢にも脱帽。

日本のフラメンコ。スペインのフラメンコ。
とかいってもやっぱりフラメンコなんだよな。
それぞれがどこをみて、今をどう生きてるか。
踊りには全部でちゃうような。
なーんて抽象的?独りよがりですみません。
自分の中でまだちゃんと整理できてないのかな。

来週はスペインから一時帰国中の萩原淳子が彼女の師の一人、AMIと共演する。

2010年3月17日水曜日

ラファエル・エル・ネグロ逝く

 トリアーナ生まれのヒターノ
力強く、男らしく、かつ優雅
そのブレリアスの一振りは
観る人誰をも虜にする。

マティルデ・コラルの最愛の夫君
ラファエル・エル・ネグロが
3月17日朝6時に
トリアーナのインファンタ・ルイサ病院で亡くなった。

本名ラファエル・ガルシア・ロドリゲス。
1935年生まれ。
シギリージャスにその名を残し、闘牛士を輩出したカガンチョの血筋。
妻マティルデとホセ・グレコなどの舞踊団や
タブラオ“エル・グアヒーロ”、“ドゥエンデ”
そして、マティルデ、ファルーコとともに
トリオ“ロス・ボレーコス”を結成、フェスティバルなどで活躍した。
妻とともに舞踊学校で教授活動をするも
病気のため舞台からは引退。
何度か妻の舞台のフィン・デ・フィエスタでブレリアを踊ったが
それはみごとなものだった。
数年前、オテル・トリアーナで開かれたトリアーナ・フラメンコ祭、
マティルデに捧げられたこの催しの最後に一振り踊った。
その粋なこと!
翌日のトリアーナは彼の話題でもちきりだった。

私のセビージャの家は彼らの家の近所なので、
よくパン屋やバルで会ったものだ。
いつもマティルデを思いやるやさしい人柄。
ヒターノも非ヒターノもない、
古き良きトリアーナのアルテを体現している人だった。

今すぐセビージャに飛んでいきたい。
彼に別れをきちんと告げたい。
が、現在日本でそれもかなわぬ私は祈るだけです。




2010年3月16日火曜日

ヘレスのフェスティバル その後2

観客の投票による賞は最終日を飾った、
ホアキン・グリロが彼の師フェルナンド・ベルモンテへの
オマージュとして制作した「レエンクエントロ」が受賞。

次点もホアキン・グリロの「レジェンダ・ペルソナル」、
3位がラファエラ・カラスコの「バモス・アル・ティロテオ」

また批評家賞はホアキン・グリロの「レジェンダ・ペルソナル」となりました。

毎年素晴らしい公演がめじろおしのヘレス・フェスティバル
来年はあなたもぜひ!

2010年3月15日月曜日

ヘレスのフェスティバル その後

3月13日に閉幕した第14回ヘレスのフェスティバル。
公演、クラス、講演、展覧会など、全部で135のイベントが行われ、
延べ34000人の観客を集めた。
世界的な経済不況にも関わらず、半分の公演が満員札止め。
ビジャマルタ劇場で行われた14の公演は平均して92%の集客。
その他の劇場での公演も89%の入り。
クルシージョには日本を筆頭に、ベネズエラ、メキシコ、カナダ、ノルウエー、オーストラリア、台湾、中国、ロシア、ハンガリー、ブラジルなど世界41カ国からの参加者が集まった。

新人賞はベレン・マジャとの「バイレス・アレグレス・パラ・ペルソナス・トゥリステス(悲しい人たちのための楽しい踊り」ですばらしい舞台をみせたオルガ・ペリセに決定。
さて作品賞は?

2010年3月13日土曜日

コルドバ・ギター祭のフラメンコ・プログラム


今年で30周年を迎えるコルドバ・ギター祭のプログラムが発表。

このギター祭をはじめたパコ・ペーニャのミサ・フラメンカ
(カトリックのミサの聖歌がフラメンコ、というもの)
に始まり、アニメとダンサーの共演もあるというハビエル・ラトーレ振り付けの新作、
ビエナルでも上演予定のアルカンヘルとホセ・アントニオ・ロドリゲスの共演
エバの最新作「ジュビア」
外国人ギタリストたちの小公演
そしてパコ・デ・ルシア!
と盛りだくさん。
フラメンコ以外のクラシックの公演も充実しています。
ギターファン必見!

◆第30回コルドバ・ギター祭 
7/6(火)22時30分「ミサ・フラメンカ」
[出]〈g〉パコ・ペーニャ
[場]コルドバ メスキータ/カテドラル(招待客のみ)
7/7(水)21時「エル・ドゥエンデ・イ・エル・レロッホ」
[出]〈b〉レケテダンサ(ハビエル・ラトーレ舞踊団)
[場]コルドバ グランテアトロ
7/10(土)23時30分「F2」
[出]〈g〉ホセ・アントニオ・ロドリゲス、〈c〉アルカンヘル
[場]コルドバ アセルキア劇場
7/12(月)21時「ジュビア」
[出]〈b〉エバ・ジェルバブエナ舞踊団
[場]コルドバ グランテアトロ
7/16(金)21時30分
[出]〈g〉フラビオ・ロドリゲス
[場]サラ・オリベ
7/17(土)21時30分「パセアンド・ポル・タベルナス」
[出]アミル・ジョン・アダッド、アメラジャ・クインテット・フラメンコ
[場]サラ・オリベ
7/18(日)21時30分「ゴタス・デ・アニス」
[出]〈g〉カルロス・レデルマン
[場]サラ・オリベ
7/19(月)21時30分「ギタラ・アデントロ」
[出]〈g〉ラウル・マノラ
[場]サラ・オリベ
7/24(土)23時30分
[出]〈g〉パコ・デ・ルシア
[場]コルドバ アセルキア劇場
[問]http://www.guitarracordoba.com /

2010年3月11日木曜日

ハビエル・コンデ&沖仁

第1回から欠かさず見続けているヘレスのフェスティバルを途中で去って東京へ。

12日、東京草月ホールで行われる
カディスの赤い星コンサート
のためにスペインからハビエル・コンデ、ホセ・コンデ親子に同行。

ハビエル・コンデは
エストレマドゥーラ地方の世界遺産の町、カセレス出身。
サビーカスなどギターの巨匠たちの古典的作品を
抜群のテクニックでみごとにひきこなし
こどもの頃から天才少年といわれ
ラ・ウニオンのコンクールで優勝したこともある実力派。

彼が今回逢坂剛さんのカディスの赤い星のゲストとして来日
おとといのリハーサルでは沖仁さんとお手合わせ
いやいやこれはものすごいものになりそうです。

昔からのギターファンも今のギターが大好きな人も
フラメンコ好きなら必見でございますよ。
草月ホールでお会いしましょう!

2010年3月10日水曜日

ビエナルのプログラム発表!

ついについに! 
今年のビエナルのプログラムが発表になりました。
55作品が65公演! 新作が26!
前売りは3月22日からこちら
もしくはビエナルの公式ウエブで!

◆第16回ビエナル・デ・フラメンコ 
9/15(水)22時「開幕コンサート」
[出]〈c〉ミゲル・ポベーダ
[場]サン・フランシスコ広場
9/16(木)21時「カサブランカ」
[出]〈c〉エル・レブリハーノ
[場]ロペ・デ・ベガ劇場
9/16(木)21時「トランキーロ・アルボロト」
[出]〈b〉ルベン・オルモ舞踊団
[場]セントラル劇場
9/16(木)23時「エン・コンシエルト」
[出]〈g〉ダビ・カルモナ
[場]アラメーダ劇場
9/17(金)21時「アシ・セ・カンタバ・イ・アシ・カンタン」
[出]〈g〉アグヘータス、ホセ・メネセ
[場]ロペ・デ・ベガ劇場
9/17(金)21時「フラメン-プーラ」
[出]〈g〉ニーニョ・デ・プーラ、ゲスト〈c〉チュルンバケ
[場]ビジャマルタ劇場
9/17(金)23時30分
[出]〈c〉ペレ(ルンバ歌手)、ロス・チチョス、キコ・ベネノ
[場]アウディトリオ・ロシオ・フラード
9/18(土)19時「若きフラメンコ、アンダルシア・コンクール決勝進出者」
[場]アラメーダ劇場
9/18(土)21時「ヘレス。ラ・ウーバ・イ・エル・カンテ」
[出]〈c〉フェルナンド・デ・ラ・モレーナ、エル・トルタ、ルイス・エル・サンボ、〈b〉ホアキン・グリロ、〈g〉モライート
[場]ロペ・デ・ベガ劇場
9/18(土)21時「グリト」
[出]〈b〉ホセ・マジャ、アルフォンソ・ロサ
[場]セントラル劇場
9/18(土)23時「カディス・エテルナ」
[出]〈c〉ランカピーノ、フアン・ビジャール、ナノ・デ・ヘレス、マリアーナ・コルネホ、〈b〉リディア・カベージョ
[場]オテル・トリアーナ
9/19(日)20時30分「クアンド・ラス・ピエドラス・ブエレン」
[出]〈b〉ロシオ・モリーナ
[場]マエストランサ劇場
9/19(日)23時「エル・エスペホ・エン・ケ・メ・ミロ」
[出]〈c〉ダビ・ラゴス
[場]アラメーダ劇場
9/20(月)21時「ラ・パシオン・セグン・セ・ミレ」
[出]〈b〉アンドレス・マリン、コンチャ・バルガス(ゲスト),〈c〉ローレ・モントージャ、ホセ・デ・ラ・トマサ(ゲスト)
[場]ロペ・デ・ベガ劇場
9/20(月)23時「ア・コントラティエンポ」
[出]〈g〉パコ・エスコバル
[場]アラメーダ劇場
9/21(火)20時30分「ソンレイアス」
[出]〈b〉ファルキート
[場]マエストランサ劇場
9/21(火)23時「アイレス・デ・レバンテ」
[出]〈c〉ロシオ・セグーラ
9/22(水)20時30分「シン・ムロシ」
[出]〈piano〉ドランテス、ゲスト〈c〉ホセ・メルセ、エスペランサ・フェルナンデス、エル・レブリハーノ、エル・ペレ
[場]マエストランサ劇場
9/22(水)23時「コラル・デル・カルボン」
[出]〈c〉アントニオ・カンポス
[場]アラメーダ劇場
9/23(木)21時「マエストロス」
[出]〈c〉バルデラマ
[場]ロペ・デ・ベガ劇場
9/23(木)21時「アレハンドリアス、ラ・ミラーダ・オブリクア」
[出]〈c〉フアン・ホセ・アマドール、〈b〉フアン・カルロス・レリダ、マルコ・バルガス、クロエ・ブルーレほか
[場]ボデガ・ロス・アポストレス
9/23(木)23時「ラ・ビーニャ;カントン・インデペンディエンテ」
[出]〈c〉ダビ・パロマール
[場]アラメーダ劇場
9/24(金)21時「ムヘレス」
[出]〈c〉フアナ・ラ・デル・ピパ、ドローレス・アグヘータ、ラ・マカニータ
[場]ロペ・デ・ベガ劇場
9/24(金)21時「ラ・グロリア・デ・ミ・マレ」
[出]〈b〉ラ・チョニ・フラメンコ舞踊団、ゲスト〈c〉エル・ロンボ
[場]セントラル劇場
9/24(金)23時30分
[出]〈g〉ライムンド・アマドール、〈c〉レメディオス・アマジャ、ラ・マラ
[場]アウディトリオ・ロシオ・フラード
9/25(土)20時30分「エン・コンシエルト」
[出]〈g〉トマティート
[場]マエストランサ劇場
9/25(土)21時「ラス・ミーナス・デ・エヒプト」
[出]〈c〉アルヘンティーナ
[場]セントラル劇場
9/25(土)23時30分「ノーチェ・デ・エストレマドゥーラ」
[出]未定
[場]オテル・トリアーナ
9/26(日)20時30分
[出]〈c〉エストレージャ・モレンテ
[場]マエストランサ劇場
9/26(日)23時「フラメンコ・アクトゥアル」
[出]〈piano〉ボルハ・エボラ、〈b〉アナ・モラーレス
[場]アラメーダ劇場
9/27(月)21時「パストーラ」
[出]〈b〉パストーラ・ガルバン
[場]ロペ・デ・ベガ劇場
9/27(月)23時「コンクエルダ」
[出]〈g〉サンティアゴ・ララ、〈b〉メルセデス・ルイス
[場]アラメーダ劇場
9/28(火)20時30分「F2」
[出]〈c〉アルカンヘル、〈g〉ホセ・アントニオ・ロドリゲス、ゲスト〈b〉アントニオ・カナーレス
[場]マエストランサ劇場
9/28(火)23時「アルゴ」
[出]〈b〉コンチャ・ハレーニョ
[場]アラメーダ劇場
9/29(水)21時「パセオ・ポル・エル・アモール・イ・ラ・ムエルテ(神曲より)」
[出]〈b〉ホセ・アントニオ・ルイス、フェルナンド・ロメーロ、ゲスト〈c〉アルカンヘル
[場]ロペ・デ・ベガ劇場
9/30(木)、10/1(金)12時、18時、10/2(土)18時、10/3(日)18時(こどものための公演)「フラメンコ・スクール・ミュージカル」
[出]〈c〉ラウラ・ビタル・カンパニー
[場]アラメーダ劇場
9/30(木)20時30分「HIBIKIエステ・オエステ小松原庸子舞踊団40周年記念公演」

[出]〈piano〉ドランテス、〈c〉フアン・ホセ・アマドールほか
[場]マエストランサ劇場
9/30(木)21時「ウン・カント・ア・ラ・リベルタ」
[出]〈c〉パンセキート
[場]セントラル劇場
10/1(金)21時
[出]〈b〉アントニオ・エル・ピパ舞踊団
[場]ロペ・デ・ベガ劇場
10/1(金)21時「エル・アグア・エンセンディーダ」
[出]〈g〉フアン・カルロス・ロメーロ
[場]セントラル劇場
10/1(金)23時30分「ネグロ・コモ・ラ・エンドリーナ」
[出]〈c〉イネス・バカン、ペドロ・ペーニャ、〈g〉ペドロ・デ・マリア、〈b〉コンチャ・バルガスほか
[場]オテル・トリアーナ
10/2(土)21時「マリナ」
[出]〈c〉マリナ・エレディア
[場]ロペ・デ・ベガ劇場
10/2(土)、3(日)20時30分「ドゥーナス」
[出]〈b〉マリア・パヘス、シディ・ラビ・シャカウィ
[場]マエストランサ劇場
10/2(土)23時30分「エンサジョ・イ・タブラオ」
[出]〈b〉ラロ・テハーダ、〈c〉インマ・リベロ、フアン・ホセ・アマドール、特別協力〈b〉マノロ・マリン、ゲスト〈c〉セグンド・ファルコン
[場]ロペ・デ・ベガ劇場
10/3(日)23時「エン・ラ・オルマ・デ・スス・サパトス」
[出]〈c〉イサベル・バジョン舞踊団
[場]セントラル劇場
10/4(月)、21時「バイベネス」
[出]〈b〉ハビエル・バロン舞踊団
[場]ロペ・デ・ベガ劇場
10/4(月)23時「ア・ティエンポ」
[出]〈c〉ラ・トレメンディータ、ゲスト〈b〉ロシオ・モリーナ
[場]セントラル劇場
10/5(火)、6(水)20時30分
[出]〈b〉エバ・ジェルバブエナ舞踊団
[場]マエストランサ劇場
10/6(水)12時、7(木)12時、8(金)12時、18時(こどものための公演)9(土)18時「フラメンコ・キッズ」
[出]〈g〉ホセ・ルイス・モントン、〈c〉アナ・サラサールほか
10/6(水)21時「150グラモス・デ・ペンサミエントス」
[出]〈b〉ラファエラ・カラスコ
[場]セントラル劇場
10/7(木)21時「ライセス・デル・アルマ」
[出]〈c〉エスペランサ・フェルナンデス
[場]ロペ・デ・ベガ劇場
10/7(木)23時「アル・コンパス・デ・ソレール」
[出]〈b〉ラファエル・カンパージョ
[場]セントラル劇場
10/8(金)21時「バイラール、ビビール」
[出]〈b〉ラ・モネータ、特別協力〈piano〉ディエゴ・アマドール
[場]ロペ・デ・ベガ劇場
10/8(金)23時「アン・カパウラ」
[出]〈c〉マヌエル・デ・パウラ、ゲスト〈c〉ミゲル・フニ
[場]セントラル劇場
10/9(土)20時30分「閉幕コンサート」
[出]〈g〉パコ・デ・ルシア
[問]http://www.bienal-flamenco.org/

2010年3月8日月曜日

ヘレスのフェスティバル12 マリア・デル・マル・モレーノ

フェスティバルのクルシージョでも公演でも常連、
ヘレスのバイラオーラ、マリア・デル・マル・モレーノ
毎年のように新作を発表するがそのほとんどが
踊り手は彼女一人でヘレスの歌い手たちをゲストに招き
歌をきかせるというもの。
それが彼女のスタイルである、わけでもあろうが
毎回観る方としてはあきてしまう。
あ、毎回観る方が悪いのか?


今回のゲストはその夜、ボデガで主役公演が決まっていた
ラ・マカニータとフアナ・ラ・デ・ラ・ピパ
それにいつものアントニオ・デ・マレーナやダビ・ラゴス、マヌエル・デ・マレーナ
ギターのゲストでホセ・ルイス・モントンも登場し
モデルノとクラシックの間でゆれる21世紀のバイラオーラがテーマだというのだが
ちゃちな芝居と長い上演時間、照明音響もほめられるものではない
カンテを踊る、というのが彼女のテーマなら
それを誰かに構成演出してもらう、というのもありではなかろうか。
今のままでは毎年同じ、という感じをまぬがれまい。
振り付けにしても同じような振りを何度も繰り返すわ
テクニック的にも現在の最先端ではない。
いや最先端がいいというわけではないんだけどね。

最初は黒い衣装のままで数曲踊るのだが
黒い衣装のグアヒーラにアレグリアスは抵抗感がある。
白いマントンをまくとか、ボレロを着るとか、なにか工夫はできなかったものだろうか。
曲を踊るということは、その曲を演ずるということでもある。
物語等のある作品で、その曲をほかの意味でつかう、
たとえばメロディとしてその曲をつかっている、ということでもない限り
曲の基本はおさえていてほしい、と思ったりするんだよね。
なんか、すごくフラストレーションがたまる公演だった。
花粉症にもなっちまったぜ。
ってこれは関係ないか。

2010年3月7日日曜日

ヘレスのフェスティバル11 ラファエラ・カラスコ

なんという美しさなんだろう。
美しい姿。
美しい動き。
その美しさはフラメンコ舞踊の歴史の中でずうっと育まれてきたものだ。

ラ・アルヘンティニータが歌いロルカがピアノで伴奏する
スペイン民謡集のCDを聴いたラファエラが
それにインスパイアされてつくりあげた舞台
「バモス・アル・ティロテオ」は
伝統と今が交差する
それは美しい舞台だった。

カスタネットを操るラファエラが
フラッシュのような照明にうかびあがるオープニング
グラナダ出身の若手カンタオール、アントニオ・カンポスが
「アンダ・ハレオ」の曲をペテネーラのメロディで歌えば
高音のきれいなヘマ・カバジェーロは「ラス・モリージャス・デ・ハエン」を
ティエントスのリズムで歌い上げる。
セビジャーナス「ビバ・セビージャ」を踊るのは4人のバイラオール。
上体は男性舞踊の基本である直線的な動きをみせるのに
下はバタ・デ・コーラをまとい、バタの技術をきちんとみせる
というとアンバランス/ミスマッチに思えるだろうが
テクニックのすごさでとても美しい場面となっている。


バタ・デ・コーラのラファエラと
ダビ・コリアがマントンを手に舞うパ・ド・トゥの比類なき美しさ。
アントニオとロサリオ、ピラール・ロペスとアレハンドロ・ベガといった
パレハの伝統を思い起こさせつつ現代的なセンスをとりいれた
この「クアトロ・ムレーロス(4人のラバ飼い)」


そう、この作品は古典の美しさが
現代的なセンスで美しく再創造、再構成されているのだ。

男性舞踊手たちが伝統的な腰高のズボンにベストという衣装で
赤いコルドベスを手に赤い靴で踊るシーンも
過去への郷愁だけでなく
強烈な美意識によって現代的にみせている。

ラファエラのパルマだけでのソロ!
アクセントのつけかた
イントネーション
ブエルタのバリエーション
サパテアードのコンビネーション
すべてが完璧だ。

ひとつひとつのかたちの美しさ
どこを切り取っても美しい


照明とのコラボレーションでの魅せ方!
本当に素晴らしい舞台だった。

伝統に学び
新しい地平を切り開く
ラファエラ
もう一度といわず、何度でもみたい。
世界中のオペラ劇場で公演するべき作品だ。

スペイン舞踊の最高峰にラファエラは到達した。




2010年3月6日土曜日

ヘレスのフェスティバル10 ハビエル・ラトーレ/振り付け工房

ヘレスのフェスティバルというと
スペインの今を代表するアルティスタたちの公演とともに
そのアルティスタたちによる
世界中から生徒が集まるクルシージョが有名。
その講師陣たちには第1回からずっと担当している
アンヘリータ・ゴメスをはじめ
マティルデ・コラルやメルチェ・エスメラルダなど常連講師がたくさんいる。
ハビエル・ラトーレもそんな一人。
バレンシア生まれでスペイン国立バレエ団ソリストを経て
コルドバのコンクールで初の3部門受賞をはたした。
2003年に舞台での公演活動は引退したが
振付家としての活躍はご存知の通り。
「リンコネーテ・イ・コルタディージョ」「ペネローペ」「トリアーナ」
「ロコ」「フェードラ」…
昨年小島章司「セレスティーナ」を振り付けた彼の今年のクラスは
タジェール・デ・コレオグラフィア
振り付け工房と名付けられ
単なるクルシージョではなく
実際の振り付けを通して
グループでの動き 舞台上での構成なども学んでいく、
というものだった。
6日間、6つのクラス
出身もレベルも経歴もさまざまな20人が
学んだ振り付けをサラ・パウルで披露したのがこの無料公演。

クラスのメンバーによるタラントにさきがけ
ハビエルの愛弟子、メキシコ出身のカレン・ルゴのマルティネーテ
地元へレスでアカデミアをやっているチキとカルロス・カルボネルによるタンギージョ
そしてハビエルによるティエント
彼がセレスティーナで振り付けた曲だ。
優雅なブラソ、余韻をひく腕の使い方、美しい回転
かつての彼の魅力は健在だ。
ひとつひとつの動きに心がこもっている。
腕を右へやったらそれに心もついていくのだ。
首のつかいかたも心憎いほど。
ドラマティックなナンバーだった。
そしていよいよクラスの面々。


一人で
 二人で
  三人で
群舞で パレハで
現れてはきえ、消えては現れる
こった振り付けを生徒たちは精一杯踊った
たった6日間でこれだけの作品をつくりあげた
ラトーレと生徒たちに脱帽
目頭があつくなる

その夜中、余韻さめやらぬラトーレがよもやま話の中で
「プロとして扱えばプロとしてこたえてくれる」
と話していたのが印象的。
群舞がはじめてだった生徒も レベルが低い生徒も
皆が皆 自分のマックスをだしきり
ひとつの振り付けをつくりきった。
これほどの満足感はないだろう。

レベルの高い舞踊団の公演も勉強になるが
こういった公演もまた、見る側にとってもたいへん勉強になる。

どこにアクセントをつけるか
姿/形をどうイメージするか
舞台の上の歩き方
表情
次の振り付けを考えて踊るのではなく
ひとつひとつの振りを精一杯やりきって次にいくこと
ななめの線
正面だけで踊らない
腕の位置 顔の位置
フラメンコ舞踊ってすごく複雑だけど
それだから面白いのだと思う

個性と技術と表現
やっぱフラメンコはやめられない

2010年3月5日金曜日

ヘレスのフェスティバル9 ミストロボ


ヘレスのフラメンコ・ギタリスト、フアン・ディエゴと
ドイツ生まれのスペイン人でヘレス在住のホルヘ・ゴメス。
その昔サラ・バラスの伴奏で来日もした彼だが今は主にエレキギターを演奏し
トマシートたナバヒータ・デ・プラテアなどを伴奏している。
この二人にフアン・ディエゴの義弟チスパのパーカッション、
ディエゴ・カラスコのグループでも出演していたベースのイグナシオ・シンタード
という4人がミストロボ。
あちこちで出会ううち自然にできあがったグループで
1年かけて(でも実際に録音したのは15、6日)アルバムを録音。
その新譜発表もかねたコンサート。

その音楽はフラメンコあり
アクースティックあり プログレ風あり アンダルシア・ロック風あり
バラエティにとんだ出来
エレキギターのソレアとかいやいや、なかなか楽しく面白い



ヘレスのフェスティバル8 セレナータ・アンダルーサ

ファリャ、アルベニス、グラナドス
近代スペインを代表する作曲家の作品とフラメンコを組み合わせた
「セレナータ・アンダルーサ」

アメリカでピアノを学んだMie Matsumuraは
クラシックばりばりでフラメンコにふれたこともなかったという。
知り合いに紹介されたスペイン人に会いがてらいったマルワ財団のコンクールで
夫となるハビエルに出会い、彼を通じてフラメンコと親しみはじめ
スペインの作曲家たちの作品を弾き始めたのだという。
その夫のプロデュースによるこの作品は
彼女のピアノを中心に展開。


ピアノ曲を踊ったり
ピアノとフラメンコギターがからんだり
マラゲーニャをピアノで伴奏したり。

この夜の白眉はアントニオ・カナーレス。
アルベニスのグラナダをマントンで踊ったあと、
最後に踊ったソレアがすごかった。


昔から彼の十八番のソレア
音楽や構成は昔の、あのソレアがベースになっているのだが
細かいところは大幅に変わっている。
じっと動かず、すっと投げかけるその視線だけでもパワーが伝わってくる
強いサパテアードも健在!
静と動 強と弱 光と影
対称的な要素をコントロールして
つくっていく彼のフラメンコ世界

舞台に出ただけで
ただ歩くだけで
彼という存在が 彼の心が
観ている側に圧倒的なエネルギーをもって伝わってくるのだ

カナーレス!


太っても 年とっても(って同い年なんだけど)
あのすごいフラメンコ性は健在