2012年12月14日金曜日

イスラエル・ガルバン「ロ・レアル」

マドリードのテアトロ・レアル、
王宮の前にあるこのオペラハウスで
イスラエル・ガルバンの新作「ロ・レアル」が
12月12日初演された。

2時間10分という長丁場もあってか
途中で退席する人も少なからずいた。
「悪ふざけだ」
と叫ぶ人もいる問題作。

好みはわかれるだろう。
フラメンコやバレエ、という言葉から
一般にイメージするものとは一番遠い舞台だったかもしれない。


テーマはナチスによるジプシー迫害。
日本ではほとんど知られていないが
ナチスの強制収容所にいれられたのはユダヤ人だけではない。
ジプシーもまた迫害の対象だったのだ。


ひゅっ、ひゅっと風を切る細竹の音でソロを踊るイスラエル。
上半身裸だがあばら骨がうきあがっている。

この人の完璧な動き、かたちはどこからくるのだ。


イスラエルの作品にはよくあることだが
物語もなく、説明もない。
闘牛をあつかった「アレーナ」もそうだった。
今回もそうだ。

壊れたピアノ。
そこからのびたリングロープのようなゴム。
何もわからないまま観客はイスラエルと対峙する。
ベレン・マジャはイスラエルその人そのままに踊る。
木靴でフラメンコシューズで。


スペインを愛したナチス幹部の話や映画「愛の嵐」を彷彿とさせる
イサベル・バジョンのセクシーさ。

時代の空気がつくられ
そんな中光に向かって踊るイスラエル。
その刹那。
息もつけない緊張感。
死にいくベレンが指差すのはわたしたち。
そしてわたしたちの目の前に現れる壁。

次はわたしたち。
わたしたちが殺した。
決してひとごとではない。
ふるえがくる。

アカポリシスを描いた「エル・フィナル・デ・エステ・エスタード・デ・コサス」
にも通じるこわさ。



もう一度観に行くつもりだ。







0 件のコメント:

コメントを投稿