2015年2月26日木曜日

へレスのフェスティバル6日目マリア・パヘス「ジョ、カルメン」

昨年バジャドリードで初演されたマリア・パヘスの新作。カルメンと名は付いているもののメリメの小説やオペラでおなじみの、あの“カルメン”ではなく、マリアがカルメンという名前をきいてまっさきに思い浮かべる彼女の叔母や隣人だったりする、スペインによくある名前のカルメンという名の女たち、すなわち女性一般をさしている。
だから音楽ではビゼーのカルメンが登場するものの、カルメンの物語が展開するわけではなく、カルメンという名前でひかれてきた観客は肩すかしにあうことになるわけだ。

© Festival de Jerez/Javier Fergo
カルメンの序曲にあわせて扇が舞うオープニングこそカルメンの物語を予感させるが、その後に続くのは、ビエナル公演でも踊られた世界の女性詩人の詩を言語で踊るナンバーだったりする。
オペラ「カルメン」の中の曲はその後もチェロやバイオリン、ギターやカンタオーラの歌声で現れる.そこにカスタネットやアバニコ、はてはほうきやはたき、ぞうきんなど小物やサパテアードで絡むマリアと6人の女性ダンサーたち。男性ダンサーが活躍するのはわずかにファルーカだけである。
タンギージョでは舞踊団のスポンサーであるロエベのバッグを手に「アンチエイジング?化粧品が何よ。ブランドが何よ。世界の半分が飢えで苦しみもう半分は痩せるためにお金を使う。私は私でいたいの」と歌い踊る。
最後は舞台上で白い衣装をぬぎすて中にきていた紫の衣装でソレア。長い腕を、身体を柔軟に動かす、彼女独特のスタイル。伝統的なフラメンコ的な美しさとはまた別ものだろう。

© Festival de Jerez/Javier Fergo”

マリアの舞台というと、華やかな衣装とホリゾントを大きく使って美しい照明でみせるという印象があるのだが、ここでは照明はずーっと薄暗い感じだし、衣装も派手さはない。それも“普通の女性”を描こうとしたゆえかも?
フラメンコとフラメンコではない曲をフラメンコのテクニックで踊るというマリアのスタイルで描く、普通の女カルメン。


オフ・フェスティバル、グアリダ・デ・アンヘルで24時から、といってもいつものように30分以上おくれて始まったアグヘータ・チーコの公演が特筆ものでありました。ドローレスの息子である彼はギタリストとしても活躍しているけれど、歌い手としても素晴らしい。ディエゴ・デ・モラオとパケーテの伴奏でソレアやマラゲーニャ、カンテ・デ・レバンテなど熱唱。それとともにかつてのケタマのような次作のカンシオンも歌い、これがまたいいのだ。その伴奏をするギターもトマティートを進化させたようだったり、パコの香りがしたり。フラメンコは着実に進歩してますね。アントニオはなにかちょっとしたきっかけでブレイクするんじゃないかな、って言う感じの実力まんたんの若きヒターノなのであります。終演後もまたディエゴらのギターで、あかぺらで、歌い続ける今が旬な彼。機会があればぜひ、お見逃しなく。

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